2024年2月26日に発表された研究により、ダウン症患者の学習と記憶の問題が、脳の「ダークマター」部分での遺伝子Snhg11の異常な発現に関連していることが明らかになりました。
この発見は、新しい治療法の開発に向けた重要な一歩です。
ダウン症(トリソミー21)は、21番染色体の余分なコピーが存在することで発生し、知的障害や学習・記憶の問題を引き起こします。これらの問題は、主に脳の海馬という部分に関連しており、海馬は学習と記憶の形成において重要な役割を果たします。
この研究では、マウスモデルとヒトの死後脳組織を用いて、ダウン症に関連する遺伝子Snhg11の発現を調査しました。
研究チームは、シングルヌクレオタイドRNAシーケンシング技術を使用して、海馬内の各細胞で活性化されている遺伝子を特定しました。
Snhg11の低発現:
- ダウン症モデルのマウスとヒトの死後脳組織において、海馬の歯状回(dentate gyrus)でSnhg11の発現が著しく低下していることが確認されました。歯状回は、新しいニューロンが生成される数少ない脳領域の一つです。
ニューロンの生成とシナプス可塑性の減少:
- Snhg11の低発現が、ニューロンの生成(神経新生)とシナプス可塑性(シナプス接続の強化や弱化能力)の減少に直接関与していることが明らかになりました。シナプス可塑性は学習と記憶の形成に不可欠です。
実験的検証:
- 研究者は、健康なマウスの脳でSnhg11の活動を実験的に低下させ、その結果としてシナプス可塑性の低下と新しいニューロンの生成が減少することを確認しました。この操作により、学習と記憶の問題が発生し、ダウン症患者と同様の症状が見られました。
この研究は、Snhg11遺伝子がダウン症の学習と記憶の問題において重要な役割を果たしていることを示しています。
この発見により、Snhg11をターゲットとした新しい治療法の開発が期待されます。
具体的には、Snhg11の発現を正常に戻すことで、ダウン症患者の学習と記憶の能力を改善する可能性があります。
この発見は、ダウン症の他の症状や関連疾患の遺伝的原因を解明するためのさらなる研究を促進するでしょう。また、Snhg11以外の長鎖非翻訳RNA(lncRNA)が知的障害に寄与している可能性もあり、これらの分子の研究も進められています。
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