ダウン症(ダウン症候群)は、21番目の染色体が通常の2本ではなく3本あることによって引き起こされる遺伝性疾患です。これを「トリソミー21」とも呼びます。ダウン症は、知的障害や身体的な特徴、健康上の問題を伴うことが一般的です。
ダウン症の原因について解説
ダウン症は、21番目の染色体が過剰に存在することで発生します。これは、受精時に染色体が正しく分配されないことが原因です。具体的な理由はまだ完全には解明されていませんが、母親の年齢が高い場合に発生率が高まることが知られています。
標準型トリソミー21
ダウン症の約95%は標準型トリソミー21によるものです。これは、21番目の染色体が1本多く(計3本)存在する状態です。
発生機序は受精時に、母親または父親の生殖細胞(卵子または精子)が21番目の染色体を2本持っているため、受精卵が3本の21番染色体を持つことになります。この異常は、主に卵子形成時の減数分裂のエラーによって起こることが多いです。
転座型トリソミー21
ダウン症の約4%は転座型トリソミー21によるものです。この形態では、21番目の染色体の一部が他の染色体に付着(転座)しています。
発生機序は通常、21番目の染色体の一部が14番目の染色体に付着することが多いです。この転座が新生児のすべての細胞に存在する場合、ダウン症の症状が現れます。転座型の場合、親のどちらかがバランス転座と呼ばれる無症状の遺伝子異常を持っていることがあります。この場合、親は異常の保因者であり、自身には症状が現れないものの、子供に転座型トリソミー21を遺伝させるリスクが高まります。
モザイク型トリソミー21
ダウン症の約1%はモザイク型トリソミー21によるものです。この形態では、一部の細胞にのみ21番目の染色体が3本ある状態です。
発生機序は受精後の細胞分裂の途中で染色体の分配に異常が生じることによって発生します。モザイク型では、症状の程度は標準型や転座型に比べて軽度であることが多く、異常がある細胞と正常な細胞が混在しています。
染色体異常の原因
染色体異常の具体的な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因がリスクを高めることが知られています。
- 母親の年齢
- 高齢出産(35歳以上)の場合、ダウン症のリスクが高まります。これは、卵子の老化によって減数分裂のエラーが発生しやすくなるためと考えられています。
- 遺伝的要因
- 転座型ダウン症では、親のどちらかがバランス転座を持っている場合、子供がダウン症になるリスクが高まります。
ダウン症の主な特徴
- 身体的特徴
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低身長、平坦な顔立ち、小さな耳、眼角の上がった目、短い首、手足の指が短い。
- 知的障害
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軽度から中度の知的障害を持つことが多いです。
- 健康問題
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心臓病、呼吸器疾患、消化器系の異常、甲状腺機能低下症などのリスクが高まります。
ダウン症は、出生前診断(例えば、羊水検査や絨毛検査)や出生後の外見的特徴と染色体検査によって診断されます。
ダウン症自体を治療する方法はありませんが、適切な医療ケアと早期の介入プログラムにより、個々の症状や健康問題に対応することが可能です。理学療法、言語療法、特別教育プログラムなどが支援として提供されます。